RESEARCH & DEVELOPMENT デジタル・解析技術

エネルギーマネジメント

再生可能エネルギー(再エネ)は天候による変動が大きいため、普及拡大に伴い電力需給バランスの確保が難しくなります。このため、様々な機器を需給バランス調整に活用する技術開発が盛んに行われています。
ENEOSグループは多くの発電・蓄電設備や水素製造設備を保有しており、これらの設備運用を最適化するエネルギーマネジメント技術の開発に取り組んでいます。
本技術を活用することで、電力余剰時の蓄電・水素製造や不足時の放電などを通じて、電力の需給バランスを安定させ、再生可能エネルギーを最大限に利用することが可能となります。

蓄電池の最適運用システム (hammock® Pro) の開発

ENEOSグループは、根岸製油所や室蘭事業所に大型蓄電池 (合計55MW) を設置し、2023年8月よりVPP事業での活用を開始しました。蓄電池の制御には、自社開発したAI(最適運転制御アルゴリズム)を搭載した最適運用システム (hammock® Pro) を内製して活用しており、運用の自動化や高度化を実現しています。
※VPP(Virtual Power Plant):太陽光発電や家庭用蓄電池等の機器をまとめて制御することで、あたかも巨大な発電所であるかのように見立てる仮想発電所

図 hammock® Proによる大型蓄電池制御の概念図

水素製造装置の最適制御技術の開発

次世代の脱炭素エネルギーとして注目されている水素は、水電解装置により余剰の再エネ電力を水素として蓄えたり、燃料電池、水素ガスタービン等で電力に戻すことができるため、電力需給バランス安定化にも貢献できます。当社では、こうした水素の特徴を最大限に生かして、電力需給と水素需給を同時に最適化し、各設備を経済的に運用するためのエネルギーマネジメント技術を開発しました。本技術は2022年度より、一部の当社水素ステーションで活用しており、安価な電気代でCO2フリー水素の製造に活かされています。

図 水素エネルギーマネジメントシステム (水素EMS) の概念図

予測技術の開発

各設備の最適運用や電力市場での最適な売買には、再エネの発電量、電力や水素の需要、電力市場価格等の正確な予測に基づいた運用計画の立案が不可欠です。当社では、これらの各予測技術について、社外技術の評価や、予測システム(hammock® forecast)の内製開発を行っています。
例えば、太陽光発電の発電量予測において、発電パネルの特性や設置条件に基づいて工学的に発電量を予測する手法と、機械学習を活用して過去の発電量を基に将来の発電量を予測する手法とを組み合わせた高精度な予測手法(「ハイブリッド予測手法」)を開発し、様々な事業への展開も進めています。

図 従来手法および開発手法による太陽光発電量の前日予測における予測誤差

実証プラットフォーム(hammock® EMS)の開発

中央技術研究所には太陽光発電、蓄電池、水素製造装置、EV充電器等、様々な実証設備が設置されています。これらの設備をインターネットに接続し、一括して監視・制御するためのクラウドシステムhammock® EMSを開発しています。このシステムを用いることで、新しく考案した制御技術をすぐに実機に適用して、実証試験を行うことができ、事業化に貢献しています。また、当社外のお客様との実証においても、本システムを活用しています。

図 実証プラットフォーム hammock® EMSの画面表示例

ソフトウェア開発

内製サービス開発にあたっては、パートナー会社のエンジニアを含むワンチームでのアジャイル開発を推進し、ミッションクリティカルなシステムであっても、週次以上のリリースサイクルを維持することを目指しています。また、常に最新の技術の活用にチャレンジし、最適な技術スタックを選択するように心掛けています。

表 主要な技術スタックの一例 (2024年9月現在)

Backend Python (FastAPI)
Optimization PuLP, Gurobi
Machine Learning Python, scikit-learn, LightGBM, Optuna, MLflow
Infrastructure AWS, Terraform, serverless framework
Visualization Streamlit, Reflex
Database AWS RDS (PostgreSQL, Aurola serverless), AWS DynamoDB
Environment VSCode (devcontainer), docker
Code Management, CI/CD GitHub, GitHub Actions
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