RESEARCH & DEVELOPMENT カーボンニュートラル

Direct MCH®

Direct MCH®の作動原理と研究開発

Direct MCH®の模式図は図1のようになります。陽極(左側)では、水の電気分解により酸素が発生します。陰極(右側)ではトルエンがメチルシクロヘキサン(MCH)に変換されます。Direct MCH®では、これまで複雑であったMCH製造を電解槽のみのシンプルなプロセスで実現できます。
このプロセスの重要な性能指標が、電流密度(反応速度)とファラデー効率(反応選択性)です。これらの性能が向上すると、MCH製造の設備コストが縮小し、水素コスト低減につながります。
当社では、電極触媒の開発や触媒層、拡散層のマクロ、ミクロ構造制御、電解槽構造設計などにより、これらの性能向上を進めています。

図1 Direct MCH®電解槽構造

社会実装に向けた電解槽大型化

Direct MCH®の社会実装に向けて、電解槽の大型化と段階的なオーストラリアでの技術実証を進めています(図2)。2022年には、商用機と同じ電極サイズをもつ150 kW級の中型電解槽の開発に成功しました。現在は、商用時の最小単位となるメガワット級の大型電解槽の開発を行っています。

図2 Direct MCH®の開発ロードマップ

社会実証に向けたプロセス開発とオーストラリアでの技術検証

2022~23年に、再エネが豊富なオーストラリアにて、Direct MCH®プロセスを用いたグリーン水素サプライチェーンの技術検証を実施しました。クイーンズランド州(QLD)ブリスベンに、250kWの太陽光発電を併設した150kWのDirect MCH®電解槽実証プラントを建設し、運転検証を行いました。このプラントの開所式はQLD州の副首相や大臣も参加し、現地でも大きな注目を集めました。運転検証では、再エネに連動したグリーンMCH製造方法の検討や亜熱帯地区での電解槽運転の課題抽出などを行いました。また、製造したMCHの一部は、日本に輸送し、当社の水素ステーションにて燃料電池バスに充填、テスト走行を行いました。

図3 ブリスベンで実施したDirect MCH®プラントの技術検証

CO2フリー水素サプライチェーンを支える2つの技術 ~Direct MCH®とMCH-FC~

再エネがたくさん“採れる”地域には世界的な偏りがあるため、再エネから作ったエネルギーを運ぶ技術の開発が必要となります。当社では、再エネから作ったグリーン水素(CO2フリー水素)を効率よく運ぶため、水素キャリアの研究開発を進めています。
水素キャリアの一つであるMCHは、トルエンに水素を付加させた液体であり、水素ガスに比べて500倍以上の水素を一度に運ぶことができます。また、MCHは大型石油タンカーや備蓄タンクなど、既存の石油インフラを活用することが可能で、グリーン水素サプライチェーンの早期構築が期待できます。
当社では、このグリーン水素サプライチェーンの上流側であるMCH製造の効率化・低コスト化する技術(Direct MCH®、上述)と下流側の技術(MCH-FC)の開発を行っています。MCH-FCについては、こちらのページをご覧ください。

図4 グリーン水素サプライチェーンにおけるDirect MCH®とMCH-FCの役割
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